Primitive Ocean

 長文になる時用のブログ。

アリシアは本当に悪女だったのか?(その5)

その4から続く。

 さて、それでは物語の核心に迫ろうと思う。ハッシュやオルステッドは、なぜ魔王を倒し切れなかったのか。実はこれは、ハッシュが使うデストレイルに真相が隠されているのではないかと思う。

 このデストレイルという技は、魔王を倒した伝説の技とされているが、そのわりにはかなり禍々しい技である。エフェクトも不気味だし、属性も「悪」になっている。しかしこの技は実際に魔王に対して大ダメージを与えることができる技なので、20年前の魔王も、中世編本編の『魔王』も倒すことができた。

 しかし、魔王の正体は言わば「憎しみ」が具現化したような存在である。憎しみに憎しみをぶつけて、一時的に勝利することはできても、滅ぼすことはできず、決定的な「勝利」を得ることはできないのではないだろうか?

 そう、デストレイルがこれだけ禍々しい技なのは、実はこの技の使い手であるハッシュが、憎しみを糧に編み出した技だったからではないだろうか?

 ハッシュがどうして魔王と戦う決意をしたのかは定かではないが、もしかすると、誰か愛する人を失うなどして、魔王に憎しみを抱いたからではないだろうか?

 そして憎しみを糧にデストレイルを編み出したが、それでは憎しみに憎しみをぶつけるだけで、魔王を完全に倒すことはできない。そのことに気付かないままデストレイルで魔王を倒してしまったので、魔王は肉体は失っても滅びることなく存在し続けた。そして魔王山深部でも同じ過ちを犯したので、魔王は滅びず、ストレイボウアリシアの精神に影響を及ぼすことができたのではないだろうか?

 これらが、魔王山で起きた事件の真相だと私は思う。

 デストレイルがなぜ魔王に対して有効なのかについては、過剰な憎しみで肉体を維持できなくなり、内部から肉体が破裂してしまうから、などと考えることができる。

 逆に最終編では、主人公たちは憎しみに依らない力で戦い、「勝利」した後に魔王と化したオルステッドの「心」も救ったことで、最終的に魔王を滅ぼすことができたのではないかと思われる。

 

 最後に。アリシアは心のダンジョンの最深部で、オルステッドを止めてほしいと主人公たちに懇願する。アリシアが自分の意思だけでオルステッドを裏切ったのであれば、これは身勝手な要求と一蹴することができるが、彼女もまた魔王の一件に巻き込まれた哀れな犠牲者とみるなら、アリシアの言葉の印象も変わってくるのではないだろうか?