Primitive Ocean

 長文になる時用のブログ。

ef - a tale of memories. 第11話「ever forever」

 千尋ーーー!!!
 駅で完成した小説を渡すあたりから漠然とした不安は感じていましたが、まさか最後に千尋があんな選択をするなんて……。
 小説の中の女の子は千尋の投影であり、女の子が絵を描くという行動は、千尋が日記を書くという行動に対応している。しかし、女の子が描いた絵はいくつ描いても、どれだけ自分に似せてもやはり絵でしかなく、自分が絵の中の女の子に成り代わることは出来ない。そして、13時間しか記憶を維持できない千尋にとっても、日記に書かれた自分は今の自分とは違う、かつての自分だったとはいえ別の人間である。絵も日記も、そこに描かれているのは自分以外の何者かに過ぎない。そして、女の子は絵に描かれた光景に手が届かない事を悟り、千尋は今の蓮治との思い出もいずれは自分のものではなくなってしまう事を悟った。女の子が感じたのは、絶対に届かない世界への羨望、その世界と自分の世界の対比から生まれる寂しさ、そしてそれら二つの感情から生まれる、絵の中の自分ではない誰かに対する嫉妬。恐らくはこれらの感情が入り混じったんでしょうね。それは千尋も同じで、日記に書かれている、主に蓮治と過ごした日々のことは、今の自分ではない別の自分が体験したものであり、その自分の記憶にはない体験への羨望、日記に書かれている自分とそれを覚えていない「今の自分」との対比からくる寂しさ、そしてそれら二つの感情から生まれる、かつての自分への嫉妬。それらの感情が女の子と同様に入り混じった。だから女の子は全てを焼き払った。女の子の世界が、あまりにも哀しく絶望的だったことを知ってしまったから。恐らく千尋も、あの小説と同じ結末を選ぼうとしていたのでしょう。蓮治の前から姿を消して、自分自身を含めた全てを葬ろうとした。なぜなら千尋の世界は小説の世界同様に絶望的であり、蓮治に幸せになってもらいたい千尋は、蓮治を自分の世界に縛り付けていたくなかったから。
 でも、蓮治が千尋と共にいることを求めた時、それを拒むことは出来なかったのは、小説の女の子と違って、千尋は心の中にまだ未練が残っているからだと思う。だから千尋は「今の自分」に全てを託したんじゃないだろうか。ちょうどKanonの栞が最後の1週間に自分の夢を全て託したように。そして、全てを終えた千尋は、女の子が絵を焼き払ったように、かつての自分の証明である日記を破り捨てた。そして恐らく、小説の結末を再現するように、自分自身も葬るつもりでいるのだろう。
 けど、まだ希望は残されていると思います。あの小説の結末には、女の子が死んだとは書かれていない。それはもしかしたら、千尋の迷いなのかもしれませんし。それと、女の子は世界にただ一人という言葉が作中で繰り返し使われているのは、新藤千尋は世界に一人だけだということを蓮治が肯定することで千尋を救う伏線かもしれませんし。いずれにせよ、悲劇的な結末を捻じ曲げることが出来るのは蓮治だけです。あとは彼の頑張りに期待するだけです。って言うかお願いだからハッピーエンドで終わらせてよ!
 そういや小説には女の子は世界にただ一人とは書いてあるけど、他の人間が死に絶えたとは書かれてないんだよな。つまり、蓮治があの小説のラストを書き加えて、新たに男の子を登場させて女の子を救うってのも考えられるんだが、読み物としちゃあその結末は唐突すぎるよなぁ。うーむ……。