Primitive Ocean

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TOMB RAIDER(トゥームレイダー ファースト・ミッション)

 ゲームとしてのTOMB RAIDERのシリーズは、世界観や開発元から、さらに3つのシリーズに分けることができる。Core Design社が開発したシリーズと、Crystal Dynamicsが開発したLegendを基点としたシリーズ、さらに発売元がスクウェアエニックススクエニ)になってからのシリーズの3つである。どれも主人公がララ・クロフトという冒険家、という点では同じだが、3つのシリーズでは世界観は繋がっていない(Anniversaryは初代のリメイクだが、世界観は独自のものとなっている)。そして、スクエニ版のララはキャラクターも一新されているため、それまでのシリーズの超人的な冒険家としてのララではなく、どちらかといえば常人寄りの、リアリティを重視したキャラクターとなっている。

 過去に2度映画化されているTOMB RAIDERと異なり、今作はスクエニ版をモデルとしているうえ、ゲームの設定同様に、今回が初めての冒険ということもあって、経験も能力もまだまだ未熟なララが、数々の困難を乗り越え成長しながら謎と陰謀に立ち向かっていくという内容になっている。そのため過去のシリーズのような超人的なスーパーヒロインが活躍する映画を期待すると、ちょっと物足りなさを感じるかもしれないが、アクションシーンの出来栄えそのものは悪くない。ララ役のアリシア・ヴィキャンデルも、スクエニ版のララとして見るならイメージと合っている。

 ストーリーもスクエニ版の1作目をベースとしているが、ゲームにいたキャラクターはほとんどおらず、ララが島に来た経緯もまるで異なるものとなっている。唯一、ゲーム版でのラスボス的な存在であるマサイアスだけが登場しているが、立場や性格は全く異なるものとなっている。

 物語の舞台は日本の沖合にある島であり、邪馬台国卑弥呼にまつわる話なのはゲームと同様なのだが、卑弥呼の設定などは映画オリジナルのものとなっている。また日本が舞台であるにも関わらず、日本人が一切登場しない。ゲームでもほとんど登場しないのだが、ララの親友のサムが日系人で、卑弥呼の遠い子孫という設定であり、それが物語の重要な鍵になる。しかしこの映画にはそうしたキャラもいないので、ちょっと寂しい気はする。なおララの相棒的な存在になるルーが中国人という設定からすると、この映画が中国市場を重視しているのは間違いないだろう。

 ゲームでも映画でも、ララの父親であるリチャード・クロフトは、物語の核心を知る重要なキャラであることが多いが、自分が実際に作中で活躍することはなく、それは専らララの役割であった。しかし今作では、リチャードにも活躍の機会が与えられており、ララと二人で窮地に立ち向かう場面などがあり、それについては新鮮な印象を受けましたね。

 映画の出来自体は、全体的には及第点だが特別優れたところがあるというわけではないので、良くも悪くも、ララ・クロフトというキャラクターに対する思い入れが評価に跳ね返ってくるような映画、だと思いました。スクエニ版の人間くさいララも、悪くはないんだけど、初代のララのような強烈なインパクトがあるわけではないので、そこをどう受け止めるかに依ると思いましたね。