Primitive Ocean

 長文になる時用のブログ。

The Martian(オデッセイ)

 リドリー・スコット監督の作品にしては珍しく、最初から最後までひたすら前向きな作品でしたね。どんな絶望的な状況でもあきらめない人間の強さ、っていうのが力強く描かれていました。ってか人間ナメんじゃねぇ。
 火星に一人取り残されたワトニーが、あらゆる困難を乗り越えて地球に生還するっていう話の展開は、まさしく「奇跡」とも呼べるものなんだけど、その奇跡が起きるまでの過程で、いわゆる「運」っていうのがほとんど排されているのが話の特徴でもあるんだよね。最初にワトニーが「運良く」生きていたっていうもの以外は、知恵と知識と火星に残された資材、ヘルメス号のクルーやNASAの協力、そしてなんとしてでも生き残るという強い意志が、「奇跡」を生み出すというのが話の流れであり、ゆえにその「奇跡」に圧倒的な説得力があるんだよね。

 ワトニーが、唯一の可燃物である木製の十字架を、水を作り出すために燃やすシーンがあるんだけど、あれは意味深だよな。一見すると「信仰」に縋っていては「奇跡」を導き出せないから、「信仰」を捨てるみたいなふうに思えるけど、そもそもその十字架があったのだって「信仰」を持っていたからなのであって、「奇跡」を導くために神が手助けをしてくれた、とも捉えられるからな。
 ワトニーの前向きさってあるいみ人間離れしてるよな。コンバット越前みたいだ。あんな長期間火星に1人でいたら、普通神経が持たないだろ。
 マーズワンなんていう計画もあるけど、この映画を見るといかに無謀な計画かが分かるな。科学的には相当忠実に描かれているそうだし。
 映像描写としては、宇宙服や嵐の描写が、同じリドリー・スコット監督のPROMETHEUSを彷彿とさせるものだったな。
 ちょっと残念な気がしたのは、ワトニーの家族が一切登場しなかったこと。出てきてもおかしくないと思ったんだけど、原作からしてそうなのかな?
 有人か無人かの違いはあれど、今作で描かれた「奇跡」と同レベルの「奇跡」をリアルでやってのけたのが「はやぶさ」なんだよなぁ。特にあのラストショットは泣けてくる。