Primitive Ocean

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宇宙戦艦ヤマト2199 第七章「そして艦は行く」

 原作の流れを踏襲しつつ、終盤も結構オリジナル要素を散りばめていましたね。ただわしの誤診でな沖田艦長が亡くなってからラストにいたるまでの場面は、悪くはないんですが、やはり原作の完成度が圧倒的だったのでちょっと物足りない感じがしましたね。
 ってかヒスとゲールが生き残ったのが驚きだ。しかもヒスは、俺のヒルデちゃんを助けただけでなく、終戦後は死んだ(と思われている)デスラーの跡を継いだだろうから、デスラーに射殺された原作に比べるとえらい出世っぷりだな。
 それに対して、古代守はやはりスターシャに助けられていたんだけど、結局帰らぬ人となってしまったな。まあ原作ではこのあとの扱いが散々なものだったし、その死も意味のあるものだったから、ここで死なせた方が良かったのかもしれないな。
 地球にあってガミラスになかったもの。それは真田志郎である。地球人は波動砲搭載の戦艦を量産するよりも、真田さんを量産するべきだろう。それくらい真田さんの存在は大きいと思ったな。スターシャもユリーシャも、波動砲を人類が手にしてしまったというより、真田さんが創ってしまったことを重要視するような表現をしていたくらいだし。実際、1年前に提供されたばかりのオーバーテクノロジーを解析し、武器に転用できることを見抜き、ヤマトに組み込んで、テストもせずに使える状態に持っていったっていうのは、ただただ脅威としか言いようがないな。他にもヤマトの航海の際の危機を何度も救ってきたし、あまりにもチート過ぎるためかさすがに今作では登場しなかったけど、波動砲すら跳ね返す空間磁力メッキなんてものまで創っているからな。もう全部あいつ一人でいいんじゃないかな、って思えてくるよ。
 デスラーの、手段が目的へと変わってしまうのは原作でも今作でも描かれていたことですね。原作では、ヤマトの撃破はあくまで地球に移住するための手段に過ぎなかった。だからバラン星を犠牲にしてでもヤマトを沈めようとしたドメルを批判したりもしていたわけですが。ところがガミラス本星での決戦で、ヤマトに海底火山脈を波動砲で撃ち抜かれて地殻変動を起こされ、自らが導くはずだった民もろとも都市が壊滅したのを見て、デスラーは豹変してしまった。ヒスはこの時のデスラーを「おかしくなられた」と表現していましたが、それもあながち間違いではなかった。ヤマトの撃破が手段から目的へと変貌してしまい、ヤマトをなにがなんでも倒さないといけないという強迫観念に駆られ、移民用のロケットをミサイルに見立ててヤマトを攻撃するという暴挙に出てしまったのですから。
 今作はもっとゆっくりと考え方の変遷が進行していたようですね。デスラーは原作ではローマの皇帝をイメージして創られたキャラクターらしいのですが、実際現実のローマ帝国ガミラス同様に、異民族を庇護し同化することで勢力を拡大していった。しかし全ての民族がそれを受け入れたわけではなく、一旦はローマに従属しても、やがては反乱を起こす民族も多かった。ガリア人なんかがそうですね。ガミラスも、ザルツ人のようにガミラスの保護下に入ることを受け入れた者たちもいたが、後に反乱を起こすものや、地球やガトランティスのように、そもそも同化政策自体が受け入れられない民族もいた。元々は宇宙に平和をもたらすために始めたはずだったガミラスによる同化政策が、なかなか進まなかったことが、デスラーの考え方を変えていき、ついには同化政策自体が目的へと変わってしまった。そして目的達成のためには、寛大で慈悲深い対応よりも、恐怖による支配こそが有効であると考えるに至ってしまった。ギムレーのような、本来デスラーとは相容れないような考え方の持ち主が重用されるようになったのはそのためなのでしょうね。
 デスラーがバレラスもろともヤマトを葬ろうとしたのも、かつての自分と決別するためだったのでしょう。もしかしたら、デスラーはズォーダー大帝みたいな指導者を目指していたのかも知れません。原作ではこの後、デスラーはズォーダーに助けられて、彼に感服して同盟を結ぶことになるのですが、もし今作に続編(というか続編ありきって感じで伏線張られまくっているのですが)があるとすれば、そういう流れになるんじゃないでしょうかね。